彼と生きていくということ。 [残す。]
遠い昔、
弟がまだ生まれたての赤ちゃんだった頃。
小学校にあがりたての私は、弟とふたりきりで留守番をしていました。
言葉も発せず、ただただ泣き喚く弟を、いろんな手をつかってあやすも、
なかなか泣き止んではくれませんでした。
たどたどしい手つきで弟を抱き上げました。
背中をたたいて落ち着かせようとしました。
おしめも取替え、ミルクもつくりました。
それでも泣き止まない弟に困り果て、
私も一緒に泣いてしまいました。
姉として、何もしてあげられないことへの悔しさ。
どうしたらいいのかわからない不安。
“このままお母さんが帰ってこなかったら”
しかし私と弟は、知らず知らずのうちに泣き疲れて眠ってしまっていました。
そのときの、
私の人差し指を握ってくれた、小さな手の力強かったこと。
あんなに私を困らせた弟の愛らしい寝顔。
その記憶がある限り、
私は彼と、一生をともにしていけるような気がします。
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